紀行文 その8

更新 2010年7月8日

イギリス紀行 小山恵一郎 2010年7月4日

6月中旬、延期していた還暦祝いのイギリスへのツアーに参加しましたので見聞記を記します
1. イギリスへ
12時間の飛行のすえ、やっと窓の下にこれから旅するイギリスが見えてきた。一面緑のなかに同じような家が道路に沿って並ぶたたずまいが見えてきた。16時にロンドンのヒースロー空港に到着後、再び空路、スコットランドの“エジンバラ”へ向かった

ロンドン上空 エジンバラへ向かう


2. エジンバラ
早朝、イギリスの雰囲気を味わうために街へでる。小雨で気温は10度ぐらいだっただろうか、日本と比べるとずいぶんと寒く感じる。黒い石造りのビルが目立つ古い街並みに高い教会がそびえたっていた。仕事へ急ぐ人たちとすれ違うが、傘を差さない人も多い。
朝食後、黒い石造りの建物の間を縫って、断崖の上にあるエジンバラ城に向った。ここはスコットランド王の居城だった所で、王位継承のときに用いた「運命の石」が飾られていた。砲台からは、“エジンバラ”の街が見渡せる。城の下はオールドタウンで、石畳のメインストリートはロイヤルマイルと呼ばれている

エジンバラ市街 エジンバラ市街
エジンバラ城 エジンバラ城
エジンバラ城 ロイヤル・マイル
エジンバラ城より市街を眺める セント・ジャイルズ大聖堂(ロイヤル・マイルの一角)


3. 湖水地方へ向かう
バスはエジンバラを抜けしばらくすると、比較的低い丘陵地帯を走るようになった。山は低くててっぺんはなだらかで、遠くまで見渡せる。日本と違うのは、山に木々が少ないことだ。丘陵地帯は広い羊の放牧地になっているようだ。土地の仕切りは、黒いスレート状の石が積み上げてある。ガイドさんの話では、この辺りは表土が少なく、掘ればすぐに黒い石が出てくるので、石の塀は簡単に作れるそうだ。
途中、スコットランドとイングランドの境の村で休憩。イングランドは昔、結婚のしきたりがうるさく、結婚を急ぐ若者はスコットランドとの境の村へ来て、駆落ち結婚をしたそうだ。村の土産物屋のショートニングのお土産にその絵が描かれていた。ほどなく、ガイドさんは「これがスコットランドで最後の家です」といってバスは徐行した。

スコットランドの地形 スコットランド最後の家


4. 湖水地方
湖水地方のはずれにあるホテルは牧場のすぐ横。朝の散歩をしていたら、ノウサギとであった。
湖水地方はイングランド北部にあり、氷河の浸食で形成された谷に沿って大小の湖が散在するイングランドで最も風光明美な国立公園地帯である。
湖水地方南端の町から蒸気機関車に乗る。たった18分の観光用機関車が川沿いの林をゆっくりと走った。小学校の頃、中央線でも蒸気機関車が走っていたことを思い出した。続いて、“ウィンダミア湖”のクルーズへ。甲板は風に吹かれてとても寒い。湖水地方は有数の観光地であり、イギリスの小学校の遠足の子らや世界の観光客とであわした。ウィンダミア湖は、箱根の芦ノ湖のようなところかもしれない。またはイタリアのモコ湖かもしれない。ほどなく別荘が見えてくる。湖畔にボウネスという町がある。避暑地の街の趣である。ここの一角に、“ベアトリクス・ポターの世界館”がある。ポターの生涯を紹介するビデオを見た後、ピーターラビット等のキャラクターの動物たちとの出会いがある。
そこから北に行くと、詩人ワーズワースが愛した“グラスミア”という小さな村がある。ワーズワースはここの自然がとても賞賛していたということである。
現在、イギリスの自然保護、歴史的建造物保護は、ナショナルトラストというボランティア団体の貢献が大きく、ワーズワースとベアトリクス・ポターも係りが深いという。

ホテルの庭で 湖水地方へ向かう(敷地の境は黒い石の仕切り)
     
 蒸気機関車    イギリスのKids
     
 ウィンダミア湖クルーズ    “ベアトリクス・ポターの世界館”
     
 ボウネスの街    湖の周りのハイキング
     
ワーズワースが愛したグラスミアの村 ダブ・コテージ(ワーズワースが暮らした家)
セント・オズワルド教会(ワーズワースの墓がある)


5. イングランド中部
翌日は約100キロ南東の“ハワース”へ。ここはブロンテ三姉妹の故郷として知られる小さな村。実は小説「嵐が丘」は、高校の頃読んだがストーリーは忘れてしまった。ただ、荒涼たる荒野が広がる地が舞台であったことは覚えている。小さな街で、昔ながらの石造りの家や道路が残っている。ブロンテの生家には、今でも当時そのままの姿が再現されている。実際の嵐が丘の舞台にはいかなかったが、街の周囲は今でもヒースの丘が広がっている。花で色づくのは9月ごろだそうだ
ここから約100キロ南西に“リバプール”がある。ここは昔から貿易などで栄えた大都会である。街の中心に巨大な“リバプール大聖堂”がある。
次に向かったのは、“マシュー・ストリート”。ビートルズが無名の頃出演していたというキャバーン・クラブがある。中まで入ると、ビートルズのレリーフ、土産物屋があり、今でもバンド生演奏をやっていた。道路へ出ると、ジョン・レノンが佇んでいた。
ここから50キロ南に、“チェスター”という街がある。2000年前に街を囲む城壁が作られた。現存するものは13世紀ごろの再建のようだが、街は城壁の上をぐるりと回ることで見ることができる。チェスター大聖堂がある。2階はバルコニー、ザ・ロウズを持つ木造ショッピングセンターがある。
“ストラトフォード・アポン・エイボン”は、シェークスピアが生まれ育ち、晩年を過ごした地だ。今でもその生家は残っている。また、妻、アン・ハサウェイが結婚する以前に住んでいた家が保存されている。茅葺屋根の家だが、茅葺屋根はイギリスでは裕福な家の象徴だそうだ。彼が眠るホーリー・トリニティ教会ではたまたまバザーをやっていた。
“バース”は、2000年前、ローマ人が温泉の浴場を作ったのが始まりといわれている。今は“ローマン・バス・博物館”となっている。すぐ隣には、“バース寺院”がある。また、“ロイヤルクレッセント”と呼ばれる1700年代のテラスハウスがある。“バース”を訪れる上流階級の別荘として使われていたそうだ。

 ハワース    ハワース(ブロンテ姉妹が暮らした家)
“リバプール大聖堂” マシューストリート、ジョン・レノンと
キャバーン・クラブ チェスターのザ・ロウズ
     
     
 チェスターの市街を廻る城壁    “ストラトフォード・アポン・エイボン”
アン・ハサウェイが結婚する以前に住んでいた家
 “ストラトフォード・アポン・エイボン” シェークスピアの生家    “ストラトフォード・アポン・エイボン” ホーリー・トリニティ教会
     
     
 “ストラトフォード・アポン・エイボン”のホーリー・トリニティ教会    “バース”の“ロイヤルクレッセント”
     
     
 “バース”の“ローマン・バス・博物館”    “バース”の“バース寺院”
     


6. ウェールズ
ウェールズはグレート・ブリテン島の中央部の西側に位置する。“チェスター”から西40キロのところに“ポントカサルテの水道橋”がある。1805年の完成で、長さ307メートル、高さ38メートルである。2009年に世界遺産に登録された。ここは、まだ旅行ガイドには載っていない。

“ポントカサルテの水道橋” “ポントカサルテの水道橋” 上は運河と歩道がある
     
“ポントカサルテの水道橋”


7. コッツウォルズ
ロンドンの西200キロほどのところにある“コッツウォルズ”地方は、イングランドの美しい田園風景が広がる地だ。どこまでも広がる緑の丘陵地帯は羊の牧場地帯で、蜂蜜色といわれる石の家並みがある小さな街や村が点在している。
“バイブリー”はイングランドで最も美しい村といわれる。村を流れるコルン川には今でも白鳥や水鳥がおり、1902年に建てられたマスの養殖場がある。蜂蜜色の家の庭にはきれいな花が咲いている。中には14世紀に建てられたコテージ群も残っている。
“カッスルクーム”は中世の田舎の姿を残した村である。全長500メートルほどのメインストリートの両側の蜂蜜色をした家並みは15世紀からほとんど変わらないといわれる。村に似つかない大きな教会があるが、かつて、羊毛産業が盛んだったころの隆盛を表しているそうだ。
“ブレナム宮殿”はオックスフォードの北西に位置する“ウッドストック”にあり、1700年代に建てられたイギリス式の宮殿。中に川が流れ、広大な庭園がある。
“ヒディ・コート・マナーガーデン”は1900年代に作られ、多数の小さな庭園から構成されているところ。
この辺りは、貴族の館である、マナーハウスとよばれる中世からの大きな建物が残っている。現在はホテルとして利用されているものが多い。

 バイブリー    バイブリー
     
  バイブリー マスの養殖場     バイブリー 白鳥の親子
     
     
 バイブリー    カッスルクーム
     
カッスルクームのメインストリート カッスルクーム
     
カッスルクームの大きな教会 コッツウォルズの風景 遠くまで見渡せる
     
 コッツウォルズの風景 なだらかな丘とアンティークな車    “ブレナム宮殿”
     
     
 “ブレナム宮殿”のバラ園    “ブレナム宮殿”
     
     
 “ヒディ・コート・マナーガーデン”    ストゥ・オン・ザ・ウォルトの街
マナーハウス マナーハウスの庭


8. イングランド南部
“カンタベリー”はロンドンの南100キロほどの街で、紀元前から開けた場所である。英国国教会の聖地である壮大な“カンタベリー大聖堂”に圧倒される。現在のゴシック様式の建物は12から16世紀にたてられた。
“ドーバー”は、ヨーロッパ大陸からイギリスへの海の玄関口で、ユーロトンネルが出来てからもフェリーが行き来している。街のどこからでも丘の上にドーバー城を望むことができる。切り立った白い崖は、石灰岩でできている。
ドーバーの近くに“ライ”という小さな街がある。ここも昔からの街並みが保存されている。“セント・メアリー教会”という古い教会がある。

“カンタベリー”の街 “カンタベリー大聖堂”
 ドーバーのホワイト・クリフ    ドーバー城
     
     
 ドーバーの海岸で    ライの一角
     
 ライのセント・メアリー教会    ライの一角
牧場


9. ロンドン
ロンドンはイギリスの首都であり、歴史は11世紀にさかのぼる。
“バッキンガム宮殿”は、エリザベス女王のロンドンでの住まいである。
“大英博物館”は世界最大級の収蔵品を持つ博物館である。中でも、エジプト、ギリシャ、ローマの収蔵品が有名である。エジプトのロゼッタ・ストーン、ファラオの石棺などが見られる。パルテノン神殿のファサードを飾った彫刻も見られる
“リージェンツ・パーク”は190万平方メートルの大公園である。南側にクイーン・メアリーズ・ガーデンがあり、ちょうどバラの見ごろだった。
“ウィンザー”はロンドンから45キロの場所で、900年前に砦が作られたのが起源である。エリザベス女王お気に入りの場所だそうで、我々の当初の見学日程も女王が来られるので、変更になった。内部は見学できるが、広間、謁見の間など多くの部屋があり、王室の絵画、陶器、彫刻などを見ることができる

 バッキンガム宮殿    大英博物館
     
ロゼッタ石 タワー・ブリッジ
ウェストミンスター寺院 ビッグベンと国会議事堂
 “リージェンツ・パーク”    “リージェンツ・パーク”
     
     
 “リージェンツ・パーク”のリス    “リージェンツ・パーク”
     
 ウィンザー城    ウィンザー城
     
     
 ウィンザー城    ウィンザー城
     


10.帰国の途
10日間の弾丸ツアーを終えて帰国の途についた。
日本にいては理解できないイギリスを垣間見た。都市部以外は牧場など広大な緑に覆われた国土であり、日本とはずいぶんと地勢、土地利用が異なっていることが非常に印象に残った。日本と同じく歴史がある国であるが、人々の生活にも歴史を残す文化があるのだろう。ロンドンでも田舎のコッツウォルズでも何世紀もたった石造りの家が残っており、そこに住んでいる様子は、現在の日本とはちょっと異なる。
離陸してしばらくすると、はるかかなたに白夜が見えた。