更新 2022年10月29日
私が小学校3年生、4年生であったころ、父の仕事の関係で2年間宮崎県高鍋町で暮らした。
加えて、勤務していた住友重機械工業での最後のミッションはエネルギー環境事業で、その主力商品であるバイオマス発電施設の納入先が、その隣町の川南町であった。
妻に第二の故郷と、現役時代納めた発電施設を一度見せたいと思っていた。
そんな折、昨年から、門司港⇔横須賀港の東京九州フェリーが就航したという。造船学科で学び、26年間造船に携わった造船屋として、
長距離の最新鋭カーフェリー(客船仕様)に乗ってみたいと思った。もう一つ、人生の目標として、80歳まで現役のドライバーでいたいという思いがある。
愛車の運転と、フェリーの旅行、その二つを実現するのが今回の九州旅行という企画となった。
大きな構想は私が作り、移動・宿泊・観光の詳細は妻が作るというのが、長年の我が家の役割分担、今回もその形で、旅程が計画された。
九州をメインとするも、神戸までの半ばに犬山温泉一泊を計画し、名古屋城、犬山城も観光することができた。
概略は以下のようになる。【 】内は、車走行キロ数、青字観光エリア、赤字宿泊先
10月17日(月)8:00 横浜出発→名古屋城観光→犬山温泉(八勝閣みづのを) 【360キロ】
10月18日(火)9:00 犬山温泉出発→犬山城観光→神戸港ベイエリヤ観光 【260キロ】
19:10 神戸港発(カーフェリーろっこう)→宮崎港へ
10月19日(水)8:40宮崎港着→高鍋散策→川南森林発電所等見学→高千穂峡観光→南阿蘇温泉 (ホテル夢しずく) 【200キロ】
10月20日(木)9:00 阿蘇温泉郷出発→阿蘇国立公園観光→熊本城観光→嬉野温泉(ホテル華翠苑) 【200キロ】
10月21日(金)9:00 嬉野温泉出発→長崎市内観光(平和公園、大浦天主堂、グラバー園)→
14:00 長崎発→別府温泉(ホテル花べっぷ) 【350キロ】
10月22日(土)9:00 別府温泉発→別府観光地獄めぐり→耶馬渓観光→門司港観光→
23:55新門司港出航(カーフェリーそれいゆ)→横須賀港 【250キロ】
10月23日(日) 20:45 横須賀港着→我が家 【20キロ】
「高鍋東小学校」(宮崎県高鍋町)
小3の4月に東京から引っ越してきて、結核性フリクテンという目の病で病弱だった私は、この小学校の友達に、野球、水泳、鮒突き、蛙・ヘビとの格闘、用水路遊びなど、
教えられて、転地療法の効果もあり健康になった。高鍋東小学校は、上杉鷹山などを輩出した藩校「明倫堂」を継承する学校で、教育熱心、特に徳育に力を入れた。
「人の倫(みち)を求め、これを敬(つつし)み、これを勉(つと)め、怠るなかれ、荒(すさ)むことなかれ。」と教える。
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高鍋東小学校正門にて | 高鍋藩校「明倫堂」継承の碑 |
「宮崎森林発電所」、「みやざきバイオマスリサイクル」(宮崎県川南町)
宮崎森林発電所は、住重が7年前に納めた5000キロワットのバイオマス発電設備。主に間伐材や、枝葉までをチップ化して燃料としている。
一般家庭の1万世帯程度の電力を発電、供給している。
1県に2基程度の配置であれば、森林でまかなえて、新しい苗木を植えて植林の若返りを図りサステイナブルな循環を作る。都農(宮崎)、霧島(鹿児島)、日田(大分)などにも展開されている。
一方、みやざきバイオマスリサイクルの発電設備は、ブロイラーの鶏糞を集め、これを燃料として発電するシステムで、住重が18年前に納め、稼働を開始、11,350キロワットの電力を生産している。
鶏糞はそのままではメタンを発生させるなど処置に困るが、電力に変えた後の焼却灰も農業用の肥料として活用される。SDGsの優等生のようなプラントで、ブロイラーの生産増に合わせ、
2号機も計画中とのこと。稼働中の両設備を、妻と共に見学させていただいた。
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宮崎森林発電所 | みやざきバイオマスリサイクル発電所 |
阿蘇山(熊本県)、高千穂峡(宮崎県)、耶馬渓(大分県)
阿蘇山は阿蘇5岳に囲まれた雄大な山で、草千里ヶ浜と呼ばれる草原は広がっており、牛や馬も放牧されている。周辺には、自然に湧水が湧き出る名所も多く、
私たちは白川水源を訪ねることができた。
高千穂峡は、断崖の高さが50~100mで東西7キロにわたる大渓谷であり、滝が渓谷に流れ落ち、「天岩戸伝説」など伝説による神秘を感じさせる。
まだ紅葉には早い緑と、水の美しさが印象に残る。耶馬渓も、渓谷であるが緑、紅葉の間から顔を見せる岩肌、岩峰群がすばらしい。
烏帽子岩をはじめとする8つの岩峰群の見れる一目八景を中心に、深耶馬渓一帯の広大な渓谷を味あうことができた。
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南阿蘇のホテルから見た阿蘇5岳 | 広大な草原が広がる草千里ヶ浜 | |
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高千穂峡の滝と渓流 | 耶馬渓の緑と岩峰群 |
熊本城(熊本県)、大浦天主堂、グラバー邸、平和公園(長崎県)
今回の旅では、名古屋城、犬山城、そして熊本城、お城を3つ見ることができた。戦国時代の歴史としてみることも出来るが、熊本城は2016年の震災で崩落した城が、
補修中で、今は天守閣まで登ることができ、耐震補強、制振装置まで組み込まれた新生熊本城を紹介する。
長崎は、大浦天主堂でクリスチャン弾圧の歴史が紹介されていた。グラバー園は、三菱重工の管理するところとなり、そこから見える長崎造船所は今も船を造り続けていることが嬉しい。
長崎は何と言っても、平和公園である。平和祈念像を前に、黙祷を捧げ平和を祈った。世界各国から贈られたモニュメントの中にソビエト連邦のものがあり、
「プーチンは何を思うか?」と考えた。
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耐震補強、制振装置付きの熊本城 | 大浦天主堂クリスチャン弾圧の歴史 | |
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グラバー邸と長崎造船所 | 平和公園と平和祈念像 |
九州は、温泉の宝庫である。今回の旅は、船中泊2泊の合計6泊7日なので、4泊を温泉とした。インターネットと旅情報誌で良い温泉宿を探し当てるのが妻の特技である。
今回も以下の4つのホテル旅館を、探し当ててくれた。温泉は、いずれも弱アルカリ泉質でぬめぬめ・つるつる。サービスは良く教育されたスタッフのおもてなし。
お勧めホテルの持ち味(特にグルメ)と特色を、以下の様に紹介する。
犬山温泉 「八勝閣みづのお」 飛騨牛のすき焼き、松茸土瓶蒸し
阿蘇温泉 「ホテル夢しずく」 部屋からの阿蘇の眺望、馬刺し
嬉野温泉 「ホテル華翠苑」 合理的なサービス、コスト、湯豆腐
別府温泉 「花べっぷ」 適量な料理、良質な魚のお造り
なお2か月前に申し込んだ時は、話題が無かったが、ここへきて旅割りとクーポンが発効、4軒(県)とも適用される幸運に出会えた。
この度の主役、往復のカーフェリーを紹介する。
【往路】神戸港→宮崎港13時間30分「ろっこう」(宮崎カーフェリー)2022年10月4日就航
全長194m、航海速力23ノット、トラック163台、乗用車81台、旅客576名
【復路】新門司→横須賀20時間50分「それいゆ」(東京九州フェリー)2021年6月25日竣工
全長222m、航海速力28.3ノット、トラック154台、乗用車30台、旅客268名
客室はグレードもあるが通常のホテル並み、食堂、売店、風呂、映画、プラネタリウム、等完備
船速は28.3ノットは速く、内航船では、経済的にも環境や運転手の労働条件の改善にも有効。陸上輸送に対して十分競争力があり、需要は大きいと見る。
我々はモータリゼーションの申し子、これまで9台の車に乗ってきた。今乗っている車は、Audi-A5
スポーツバックでこの11月で丸9年を迎える。クアトロで、燃費も良い。実は、80歳まで車の運転をがんばろうと目標にしていて、10代目も1年前に発注済み。
半導体不足でなかなか納期が定まらない中、多分この旅が、9代目の最後のお勤めとなると思う。A5は、今旅1560キロ、総距離68,000キロよく頑張ってくれた。たくさんの思い出をありがとう。
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「ろっこう」神戸港にて | 「それいゆ」門司港にて | |
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それいゆから見た太平洋の夕日 | 9年間ありがとう、無事故のA5 |
この3年間はコロナとの戦いであった。今年初めから、1泊2日の旅にはチャレンジして、数か所へ旅した。客船ダイアモンド・プリンセスから、コロナがスタートしたような感があった。
心理学の用語に「馴化」がある。自ら環境に慣れて、怖れを無くしていくことだ。今回の計画は、船に慣れ、旅に慣れるチャレンジだ。
手作りの旅行計画は、楽しいものだ。船と旅館の選択を含め、全ての行動は、自ら決めた。車の運転なので、「昼はビールかワイン、夜はビールとワイン」の海外旅行のコンセプトは捨て、
「夜はビールと地酒(時に焼酎)」に徹した。
今回も、何人かの方々との会話を楽しんだ。バイオマス発電所の嘗てのお客様達からは、「事業がとてもうまく行っている」と。偶然お会いした、
高鍋幼稚園の園長先生から、多くの旧知の消息をお聞きすることができた。
なにより、好天に恵まれ、青空と白い雲、海、緑と山々が迎えてくれた。この幸運に改めて九州の神々に感謝を贈りたい。